過去の出来事から類推されるものでも無い

2021052500:48

過去の出来事から類推されるものでも無い。絶対に諜報を通じて人がもたらすものである。夜半、ボーンはベッツギ川ニキロ東方の街道から雑木の繁る森林に潜り込み一人北に向けて上っていた。木々の隙間から、煌々と十五夜の満月が見える。隠密行動を取るには月が明る過ぎる夜であったが、日取りを選んではいられない。それに向こうから見え易いという事は、こちらからも良く見えるという事である。一長一短であろう。陰形の術を使い気配を消して川の音を遠くに聞きながら、川上である北に向かっていた。時々立ち止まって、川の流れに耳を澄ます。満月に照らされているとは言え、木々に身を隠して進む以上は、視界は遮られて眼で状況確認をする事は出来ない。耳が頼りであった。川の音から、水の流れを読み、地形を把握する外ない。夜半とは言え、河原にまで降りて川を遡れば、敵の目に触れる危険は高い。もし、川の水を堰き止めて貯水湖を造って有るなら、必ず見張りが置かれているだろう。 木の間から聞こえて来る川の流れには別段上流で堰き止められている様子は見られない。時折ボーンの頭を、或いは考えすぎか、あのハンベエの柄からして水攻めなどという大工事を要する戦術を取りそうには思えない、という思いがよぎる。五キロほど北上して、ボーンは木の根に腰を下ろして背をもたせ掛け、空の月を見た。international school curriculum(有るとは決まっていない敵の罠を探して、俺も随分ご苦労な事だ。・・・・・・いや、いかん。ハンベエは兎も角、敵軍のモルフィネスがタゴゴロームで仕掛けた罠を思えば、十分有り得る。それに昨日の敵間者の大量離脱。・・・・・・まかり間違えば味方の全滅に繋がる事だ。無駄足を惜しんで済ませられる事ではない。)そもそも、諜報の仕事など、砂の中の一粒の砂金を見付けるような徒労の繰り返しであったぜ、と気持を奮い立たせて更に北上を続けた。 北上を続ける内に、ボーンの耳が水の流れに異常を感じ取った。(これは、支流が有るのか? こんな所に支流は無いはずだ。いや、待て支流にしては流れの音が奇妙だ。渦巻いて戻って来ているようにも感じられる。)目を閉じて耳を澄まし、情景を頭に描く。水が流れ込んで渦巻き、そして戻って来る。それは、大きな池のような物の存在を示している。ボーンは進路を河原の方向に変え、木立の隙間を縫い、足下のわくら葉に気を付けながら、音を立てないように慎重に歩いた。身を伏せて切り立った崖に出ると、眼下にベッツギ川の水の流れが見える。月の光にキラキラと照り映えている。そうして、向こう岸に明らかに人の手によって造られた物と判る川の分かれ道があった。その別れ道の延長上に巨大な堤がそびえ、川の流れの一部を切り取って溜め込み、そして入りきらぬ水が押し戻されていた。堤を決壊させれば、溜められた水はベッツギ川に流れ込み濁流を起こすであろう事が想起される。(やはり、水攻めの仕掛けが造られていた。)とボーンは自分の予感が的中した事を実感した。ただ、月明かりで遠目に見るばかりではそれが発動された時の規模までは窺い知れない。向こう岸に渡って検分する必要がある。